2010年11月6日土曜日

トレンド分析(移動平均)

自動売買システムを設計する場合、まず、今のトレンドを推定することが重要になる。
今、この瞬間が上昇トレンドなのか、横ばいトレンドなのか、下降トレンドなのか。多くの場合、移動平均を使ってトレンドを決定する。移動平均のラインを遠目で見て、上り勾配に見えれば上昇トレンド、下り勾配に見えれば下降トレンド、どちらとも言いがたいような浅い勾配の時は横ばいトレンドと見る。人間が見る場合はこれでいいが、システムトレードの場合、どこからどこまでが上昇トレンドでどこからが横ばいなのか、決め手が全く無い。これを経験で決めるのであれば、システムトレードの意味がない。
たとえば、75SMAを基準にトレンドを決めるとする。では、なぜ75なのだろうか。
なにか基準となる数字を決めて、この数字を足したり割ったりしていると、なんとなく統計的な処理をしているようで安心するという気持ちはわからないではないが、ではなぜ70や80ではだめで75なのだろうか。
「いや、特別な意味はなく、たまたま75SMAが一番、市場の動きに合っているんです」
つい言ってしまいがちだが、これではシステムとして組み込む根拠にならない。市場は常に変動しており、1秒後には60SMAが市場を表しているかもしれないからだ。
「素人だね。75SMAには、ロウソク足が跳ね返りやすいというクセがあるんだよ」
という方は、65SMAをどれくらい真剣に試したことがあるのだろうか?
さて、移動平均とは、そもそも何のために使うものなのだろうか。オーディオや通信機などで、音や電波などの信号を扱うとき、突発的に刺のように混入するノイズの影響を小さくするために使われるローパスフィルタであり、その中で最も単純なものだ。実は移動平均にもさまざまな種類があり、加重を用いるタイプは電気回路での構成も容易であることからローパスフィルタとして使われている。
小さなノイズが入った場合、それを周りの値で平均化し、ノイズの影響を周辺に散らしてしまおうというのが、発想の根本である。
さて、FXに限らず、相場の指標として移動平均を用いることに意味はあるのだろうか?
「フラクタル」(高安秀樹:朝倉書店,1986)によると、株価の変動についてマンデルブロによって以下の法則が発見されている。
  1. 単位時間あたりの株価の変動の分布は、特性指数D≒1.7の対称な安定分布に従う。
  2. 単位時間を大きくとっても小さくとっても、この分布は相似である。つまり、適当に尺度を変えれば同じ分布になる。
このときのDはフラクタル次元を表している。
これは、株価の分析結果であるため、FXではDがいくらになるかはわからないが、二つめの性質「単位時間を大きくとっても小さくとっても、この分布は相似である」ということは株に限らずFXを含む多くの相場で共通だと思って良い。
つまり、価格の変動にはあらゆる周波数成分が含まれていることになる。従って、ある特定の移動平均線にこだわってトレードすることは、テクニカルな側面からは全く意味がない。
しかし、例えば「75SMAはローソク足を跳ね返す」という迷信を多くの投資家が信じていたとしたらどうだろうか。ローソク足が75SMAに触れそうになった瞬間、多くの投資家が売りに転じる、あるいは買いに転じるということが同時におこれば、やはり75SMAはローソク足を跳ね返すだろう。
これはテクニカル分析よりもファンダメンタル分析的な側面を持ったチャートの見方である。
自動売買システムを設計する場合、このような見方も、将棋ゲームの定石データベースのように、システムの中に持っておく必要はあるかもしれないが、実際の市場にどれだけ影響するかわからないので、システムトレードでは扱いにくいデータとなる。
では、どうすればトレンドを見極めることができるだろうか。
一つの解は、フーリエ解析を用いることだと考えている。
(続く)

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